数少ない成長産業である介護業界は、高齢化などの影響によって、今後も成長が見込まれています。しかし、業界特有の課題も数多く存在し、介護事業者は、スピード感を持って対応していかなければ、競合他社に飲み込まれてしまいます。介護業界の現況とともに、有効な課題解決手段のひとつであるM&Aについてご紹介します。
介護業界の動向と現状
ご存じのとおり、日本の高齢者人口は増加しています。国立社会保障・人口問題研究所による2017年の推計によると、65歳以上の人口は2015年では3,400万人未満であったものが、2040年には4,000万人に迫る数値になると予測されています。65歳以上の高齢者の人口割合(高齢化率)は、2015年には26.6%であったものが、2040年には35%を超える見込みです。
高齢化に伴う介護業界への影響
高齢者の増加に伴って、介護を必要とする要介護(要支援)人口も増えています。2017年6月時点の要介護及び要支援認定者数は約637万人。2000年12月時点の約250万人と比較すると、2.5倍以上に増加しています。さらに2025年には、約800万人の団塊世代が75歳以上の後期高齢者となることで、要介護認定者数はさらに増加するものと見込まれています。
このような高齢化率や要介護人数の増加と比例して、介護業界の市場規模は拡大していきます。2007年時点では6.4兆円であったものが、2025年には15.2兆円に達するともいわれています(2012年、みずほコーポレート銀行調べ)。
介護業界の再編
年々拡大する介護業界は、活発に再編成が進んできました。2007年、訪問介護最大手のコムスンによる管理義務違反や介護報酬の不正受給などの不祥事が発覚し、同年同社は介護事業から撤退。住居系(施設系)サービスはニチイ学館が事業を継承し、訪問介護事業は、セントケア・ホールディングやジャパンケアサービスグループなどが継承しました。
さらに、2012年には有料老人ホーム大手のメッセージがジャパンケアサービスを買収して子会社化。続いて、損保ジャパン日本興亜ホールディングス(現:SOMPOホールディングス)が2015年にワタミの介護事業を買収し、さらに翌年はメッセージを子会社化するなど、介護業界での存在感を増しています。
また近年、教育業界大手のベネッセホールディングスや警備会社のセコム、飲料ベンダーのユニマットなど、異業種からの参入も積極的に行われています。
介護業界大手企業の売上高
現在の介護業界の大手企業の売上高がどのようになっているのかを見てみましょう。
おもな介護サービス大手企業の売上高
会社名 | 売上高(2017年3月期決算) |
---|---|
ニチイ学館(介護・ヘルスケア事業のみ) | 1,474億5,100万円 |
SOMPOグループ (介護関連のSOMPOケアメッセージと SOMPOケアネクストの合算) |
1,108億8,500万円 |
ベネッセホールディングス(介護・保育事業のみ) | 1,029億9,600万円 |
ツクイ | 732億9,500万円 |
ユニマットリタイアメント・コミュニティ | 442億4,300万円 |
介護業界における課題
成長市場である介護業界ですが、業界特有の課題も存在します。
人材不足
まずは、人材不足の問題です。2009年に創設された「介護職員処遇改善交付金」(現在は廃止)など、介護従事者の待遇改善の施策が実施されましたが、必ずしも万全とはいえず、抜本的な待遇改善には至っていません。併せて就業現場での負担の問題もあり、慢性的な人材不足に陥っている状況です。2025年には介護人材の不足が38万人にもなるとの厚生労働省の予測もあり、人材確保が業界全体の大きな問題となっています。
業界内の競争の激化
介護施設数は増加してはいるものの、介護事業者の倒産件数は近年増加しているという現実があります。前述のとおり、成長産業であるがゆえに、異業種から資本力のある企業の参入も増加しており、業界内での競争は激化する傾向にあります。競争は、業界を活性化させる要因としても作用しますので、必ずしも悪いこととはいえませんが、サービスモデルの特性上、差別化が難しいことや人材不足の問題などによって、競争が消耗戦となる可能性があることが懸念されます。
介護保険制度改定の影響
消費税先送りなどによる財源の不足の影響によって、2015年に介護報酬が9年ぶりにマイナス改定されました。現在の財政状況を考慮すると、今後プラス改定に転じるかは微妙なところです。介護事業者の収益は、介護保険制度の影響を直接受けることになります。政府の動向に目を配るとともに、介護保険外収入を増やすなどのリスク分散策が必要となります。
管理体制の不備
残念ながら、一部の高齢者施設などで、管理体制の不備を原因とした事件や事故(虐待事件や食中毒事故など)が発生しています。こういった事件や事故は、その施設や事業者だけではなく、業界全体へ悪影響を及ぼしかねません。人材不足という課題を抱えてはいるものの、管理体制をより強化して、事件・事故の発生を極限まで抑えることが求められています。
M&Aによる課題解決
こうした介護業界の状況や課題を受けて、介護事業者は下記のような悩みや課題をそれぞれ抱えていることでしょう。
- 小規模運営なので、投資負担や人材確保について限界を感じる
- 自社の安定成長を確保するために、資金力や組織力のある大手企業の傘下に入りたい
- 自社の介護事業部門や子会社を売却することでリソースの選択と集中を進め、他事業に専念したい
- 健康問題や高齢のために、早急に事業を引き継ぎたいが後継者がいない
- 会社が好調なうちにアーリーリタイヤしたい
このような悩みや希望の多くは、実はM&Aで解決することができます。
実際に施設介護業では、一定以上の資本力があったほうが有利であり、在宅介護業でも、小規模事業者では営業力や資金力に乏しく、人材確保も難しいことから、前述したM&Aによる業界再編がすでに進みつつあります。
M&Aを行った場合の、売り手側、買い手側それぞれのメリットは次のとおりです。
- 後継者問題の解消
- 安定的で効率的な事業経営が可能
- 従業員の雇用の維持
- 創業者が利益を得られる
- 借入金の個人保証や担保の解消
- 有資格者や施設(土地や建物)をまとめて入手
- 手に入れた人材や施設を含めた事業基盤の拡大によるスケールメリット
インテグループの強み
インテグループでは、介護業界に精通した専属コンサルタントが、介護事業におけるさまざま問題をM&Aによって解決に導きます。社内には成約件数でトップクラスのコンサルタント陣をはじめ、会計士や弁護士といった各分野の専門家により、財務・法務などの問題にも、的確且つ迅速に対応することができます。
介護業界でのM&Aや売却・譲渡の支援実績があるインテグループは、さまざまな規模の介護事業者など、有力な買い手ネットワークを構築していますので、最適な相手先をご提案することができます。また、中小規模のM&Aに特化して支援していますので、有料老人ホームやグループホームなどであれば1拠点単位で、訪問介護や通所介護(デイサービス)、短期入所介護(ショートステイ)であれば売上1億円程度の規模から支援することが可能です。
さらに、M&A成立時にのみ手数料をいただく、成功報酬制度を採用しています。着手金や中間金などは不要ですので、お客様に余計な金銭的リスクや負担をおかけすることはありません。
在宅介護・施設介護の業態別M&A動向
在宅介護・施設介護の各業態のM&Aについてより詳しく知りたい方は、以下のページも併せてご参照ください。