介護事業を事業譲渡する際の注意点
介護のM&Aにおいては、スキームとしては株式譲渡か事業譲渡が採用される場合が多いですが、株式のみが移転し法人格、許認可、契約関係がそのまま残る株式譲渡のケースと異なり、事業譲渡の場合には移転手続き上で注意すべき点が出てきます。
許認可
事業譲渡の場合、許認可は自動的には引き継がれません。そのため、事前に行政と相談し手続き・スケジュールを合意した上で、売り手側が廃止届を出すと同時に、買い手側が新設申請を出すことになります。
補助金
事業譲渡の場合、売り手側が売却対象となる介護施設について何らかの補助金を受けていると、行政より補助金の返却を要求されたり、譲渡内容について一定の条件を付けられたりする可能性があります。
不動産の賃借
事業譲渡の場合、施設の土地・建物に関する賃貸借契約は自動的には引き継がれず、買い手が不動産オーナーと新たな契約を締結することになります。そのため、オーナー側から賃料・敷金の増額を要求されるケースや、買い手側が要求する賃借条件(主に、修繕・補修の負担区分について)とオーナー側の希望が乖離し合意に至れないケースが稀に発生します。
従業員
事業譲渡の場合、従業員との雇用契約は自動的には引き継がれず、買い手が従業員と新たに雇用契約を締結することになります。この場合に、売り手と買い手の賃金体系が異なっているため、異動する従業員にとって不利益な変更がないように、処遇を微調整することが必要となります。また、従業員に対して、雇用や処遇が守られる旨、事業を譲渡する意義、従業員の今後のキャリアにとってプラスであることを、しっかりと説明することも重要です。