介護事業者の指定は引き継げるのか?

介護のM&Aについてよくある質問の一つが、『許認可は引き継げますか?』というものです。

介護事業者として介護保険の給付を受けるためには、行政からの認可を受ける必要があり、買い手側で介護事業者の指定が受けられなければ、そもそも買収する意味がないということになってしまいます。

そして、この介護事業者の許認可を引き継げるかどうかは、実はM&Aの手法(スキーム)によって異なるのです。

介護M&Aにおける3つのスキーム

介護M&Aのスキームとしては、主に『株式譲渡』『事業譲渡』『会社分割』の3つがあります。

介護M&Aを株式譲渡で行う場合、会社の株主が変わるだけで、法人の介護指定には全く影響がありません。会社が過去に受けた介護事業者としての指定は、株式譲渡後も変わりなく有効です。そのため、株式譲渡の場合は、そもそも許認可を引き継げるかどうかは問題になりません。

一方、介護M&Aを事業譲渡や会社分割で行う場合、譲渡対象となる介護事業が売り手の法人から買い手の法人へと法人間を移転することになるため、その際に許認可が引き継げるかどうかが問題となります。

結論からいうと、事業譲渡や会社分割の場合には、介護事業者としての許認可は自動的には引き継がれません。

そのため、買い手企業が介護事業者の認可を受けるためには、譲渡対象事業について、売り手企業が『廃止届け』を出すと同時に、買い手企業が『新規申請』を出すという手続きが必要になります。

新たに新規申請を出すというと大変な作業になると想像されるかもしれませんが、実際には、売り手企業が過去に認可を受けた際の申請資料を活用することができ、また、指定を出す行政側も介護サービスの利用者の利便性を考慮して、協力的な態度で応じてくれることが多いため、ゼロベースで新規申請を出す場合と比べると、相当程度、申請の労力は省くことができます。

行政への相談

許認可の引き継ぎについては、買い手と売り手でM&Aの条件について合意した後に、両社で行政の担当者に時期や手続きについて相談をするところからスタートします。行政担当者に相談するタイミングですが、早いケースで基本合意の後にデューデリジェンスと並行して行い、遅い場合でも事業譲渡契約書を締結してすぐに行政への相談をスタートすることになります。

許認可が引き継げない場合

事業譲渡や会社分割の場合でも、適切な手続きを取れば、原則として、買い手は譲渡対象事業に関する許認可を取得することができます。

ただし、売り手企業が指定を受けた時期とM&Aの実行時期で、行政が指定を与える条件が変わっている場合には、稀に、買い手側で指定を受けられないことがあります。

具体的な事例では、売り手が事業を開始した数年前までは、調整区域においても居宅介護支援事業所の新規申請が認められていたが、その後行政側のルール変更により調整区域における居宅介護支援の新規申請が不可となっており、最終的に事業譲渡ができなかったというケースがありました。

行政によって異なる対応

介護事業のM&Aが多く発生している地域の行政の担当者は、M&Aについての知識や経験を持ち合わせているため、事業譲渡における相談もスムーズに進むことが多いです。一方、M&Aの前例がないような地域の行政担当者は、知識不足から『介護事業のM&Aは認められない』といった頓珍漢な回答を返してくるケースもあります。このような場合は、売り手と買い手双方が揃って行政に相談を行い、別地域における譲り受け事例を示すなどして、行政側の理解を得ることが重要となります。